●原因
もし急性な『耳鳴り』ならばすぐに耳鼻咽喉科に相談してください、心配な病気があるかも知れません。
厳密には耳鳴りは病気ではなく、何らかの病気による症状とされています。
慢性の耳鳴り(3ヶ月以上持続する場合)は聴覚神経腫瘍が聴覚神経を圧迫している場合もあるのでABR(聴性脳幹反応)やMRIで検査します。また内耳の損傷(老人性難聴・突発性難聴・急性低音障害型感音難聴・音響外傷・外リンパろう・メニエール病など)、脳血管の動脈硬化、頸椎の変性、あごの疾患、糖尿病・高血圧・脂質代謝異常などに伴う異常も考えられます。
耳鳴りが慢性化するのは独自の増幅サイクルが生じた場合で、内耳(蝸牛、聴覚神経など)が脳に送る信号が無くても耳鳴りは起こるので聴神経を切断しても耳鳴りは無くなりません。
脳内部で起こるので脳自体が原因となって耳鳴りがますます気になるようになり、無限に続く増幅サイクルになってしまいます。
● 治療
特別な病気でないことが確認された場合には一般に血液の循環を良くするために耳の組織に酸素を供給する治療が行われます。
また、内服薬(漢方薬も)、麻酔薬の点滴や鼓室内注射によって一時的に改善しますが数時間で元に戻ってしまいます。
中耳腔への電気刺激や筋肉の緊張を自分で除くバイオフィードバック療法、心理カウンセリングなどもあります。
鍼灸、マッサージ、電磁波、低周波、催眠療法、健康食品そしてオルゴールなど生の楽器を耳元で聞いて軽減する方法など、いかに多くの人が耳鳴りで悩んでいるかが解ります。
● 治療器具
以上の治療で効果がない場合は耳鳴りを気にしないという治療法があります。
以前はマスカー法という耳鳴り音の周波数(音質)と大きさを検査してそれより大きなノイズでマスキングするというものでした。
最近はTRT療法という補聴器のような形をした「持続的に心地よい治療音を鳴らし続ける」TCI(Tinnitus Control Instrument)機器を使って耳鳴りから注意をそらす訓練方法です。これは一部の医療機関で以前は扱っていましたが、現在は販売中止になっています。
左の写真は海外で販売されているTRT治療器
● 補聴器
TCIは難聴のない患者さんに使用しますが、難聴があると一緒に補聴器の役目も必要です。補聴器は聞こえの改善を目指しますが、周りの音が入ってくるとそれによって耳鳴りが気にならなくなる効果もあります。多くの方が補聴器使用中に耳鳴りが軽減したと言います。しかし、補聴器を外すとまた耳鳴りは始まりますから治療とは違います。補聴器を使っても耳鳴りの種類によっては消えない種類の耳鳴りもあります。
● 気の持ち用も解消法の一つ
耳鳴りが不快なのは音の持つ意味の違いと自分でその音を調節できないからです。他人の車のせかす警笛は気になっても自分で鳴らすと気になりません。大事な話を人前でしている時に小さな声でもボソボソと私語をされると気にするのに、拍手を受けると大きい程気持ちのいいものです。また隣のピアノの音は気になっても自分の子供が弾いている音は気になりません。もし喧しければいつでも止めさせる事ができるからです。隣のピアノの音は小さくとも大変気になることがあります。気になっても隣の家に止めるようには中々出来ません。そうなるとそのピアノの音は余計気になり益々不愉快です。耳鳴りも不愉快に思ったら際限なく不愉快になるものです。
● 日常生活の指針
- 自由な時間を楽しみ、趣味にうちこみ豊かな生活を送りましょう。
- 静かな状態を避けましょう。
- 毎日の日常生活で音に囲まれて生活するようにしましょう。
- 積極的に環境音に耳を傾け楽しみましょう。
- リラックスするよう心がけましょう。
- 難聴が有る場合は補聴器を使いましょう。
● 余話
歴史上の人物で耳鳴りに悩まされたのが マルチン・ルター、ジャン・ジャック・ルソー、ベートーベン、そしてチェコの作曲家のスメタナなどです。最近では『耳鳴り基金』を設立した女優で歌手のバーバラ・ストライザンド、男優のウイリアム・シャットナーなどです。ベートーベンと同じくスメタナはほとんど聾となりましたが、スメタナは自分の耳鳴りの体験を音楽で表現しようとしました。